芥川龍之介
『羅生門』 | 羊男の感想を集めました。
『羅生門』 平安時代の荒廃した京の都の郊外で起こる奇妙な話。 確か国語の教科書とかに載っているので誰でも知っている有名な話なんだけど、 こうして読み返してみるとイメージを喚起する文章や言葉がとても緻密な構成 の基に作られているのがわかります。 こうした文章や話の内容からボルヘスが書いた小説みたい、と誰かが言ってい たのがよくわかりました。 私も体験としてはボルヘスの方が先だったので、後から芥川龍之介のマジック・ リアリズムというのを追体験しているといった印象を受けるのですね。 物語としてはラテン・アメリカ的というより、ラテン文学に近い感じを受けま す。ボルヘスの「伝奇集」は複合的な感覚があるから、それよりもっとシンプ ルで土着的といった感覚ですね。 確かに日本の古代の物語なんだけど、うちらにしてみれば戦争後、アメリカ文 化が入ってきて、そうした伝統というものは外国人が見る視点とそう変わらな い、と思います。だから、異国の土着的な物語を読んでいるという感覚がぬけ なくて、ダンテやボッカチオの翻訳ものを読んでいるという感じに似ていたり しますね。 このあたりがストレートな三島由紀夫なんかと違うところだと思ったりします。
-1998.11.1- |