『最後の宴の客』ヴィリエ・ド・リラダン
書名:『最後の宴の客』
著者:ヴィリエ・ド・リラダン
訳者:釜山健+井上輝夫
出版:国書刊行会


【感想】

「バベルの図書館」シリーズの1冊です。
本物の貴族が書く文章とはこういうものだ、というような風格が伝わってくる短編集です。なんでもリラダン家はフランス11世紀まで遡ることが できるらしいとか。その文章はとても技巧的だけど芥川のような天才的なものではなくて、天賦のものといった気品の高い感じがします(笑)。

まあ選者ボルヘスが喜びそうな「ツェ・イ・ラの冒険」なんていう中国ものは、中華皇帝と宮廷での政治をとてもエキゾチックに描いていて唐宋伝 奇あたりの感覚をフランス風に味付けした感じのおしゃれさがあります。
その他スペイン風やらフランス風やらいろんな雰囲気を味わえます。

それとこのリラダン、日本だと「最後のイヴ」という作品で有名ですが、 そのタイトルの付け方にセンスがあって例えば「暗い話、語り手はなおも 暗くて」なんていうのは、かっこよくてつい手に取りたくなるような題ですよね。


★羊男★1998.10.18★

物語千夜一夜【第六十一夜】

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