■読書日乗/羊男/2004年度


2004-11-09 「創るモノは夜空にきらめく星の数ほど無限にある」宮脇修
2004-11-08 「あなただけができることをやりなさい」細貝俊夫
2004-11-04 「列島縦断へんな駅!?」所澤秀樹
2004-11-03 「文庫本・雑学ノート」岡崎武志
2004-10-30 「汁かけめし快食学」遠藤哲夫
2004-10-27 「鴎外の坂」森まゆみ
2004-10-18 「鉄道の旅を楽しむ本」アジア大陸編 世界の車窓研究会編 青春文庫
2004-10-17 「昭和電車少年」実相寺昭雄 JTB
2004-10-14 「20世紀SF・1940年代」1・星ねずみ 中村融+山岸真編 河出文庫
2004-10-06 「夢の底から来た男」半村良 角川文庫
2004-10-01 「ジーン・ウルフ特集」
2004-09-28 「しあわせの理由」グレッグ・イーガン 早川SF文庫
2004-09-24 「コックサッカーブルース」村上龍 小学館
2004-09-23 「むはの断面図」椎名誠 本の雑誌社
2004-09-21 「しあわせの理由」グレッグ・イーガン 早川文庫
2004-09-18 「アジアの少年」小林紀晴 幻冬社文庫
2004-09-14 「ボディ・アンド・ソウル」古川日出男 双葉社
2004-09-13 「食べていくための自由業・自営業ガイド」本多信一 岩波アクティブ
2004-09-10 「シンプル人生の経済設計」森永卓郎 中公新書
2004-09-09 「奇術師」クリストファー・プリースト
2004-09-03 「ケルベロス第五の首」ジーン・ウルフ 柳下毅一郎訳 国書刊行会
2004-09-02 「キマイラの新しい城」殊能将之 講談社ノベルズ
2004-05-09 「夜明けを待ちながら」五木寛之 東京書籍
2004-05-08 「三角館の恐怖」江戸川乱歩 創元推理文庫
2004-05-04 「流星ワゴン」重松清 講談社
2004-04-29 「笑犬樓よりの眺望」筒井康隆 新潮社
2004-04-28 「お父さんは時代小説が大好き」吉野朔実 角川文庫
2004-04-27 「学ぶとは何だろうか」鶴見俊輔座談 晶文社
2004-04-25 「青春の光と影」戦後短篇小説再発見 講談社文芸文庫
2004-04-18 「血と砂」イバーニェス 岩波文庫
2004-04-17 『ラテン音楽名曲名演名唱ベスト100』竹村淳 講談社
2004-04-16 『神の子どもたちはみな踊る』村上春樹 新潮文庫
2004-04-15 『サウンドトラック』古川日出男 集英社
2004-04-14 『地球の裏のマヨネーズ』椎名誠 文藝春秋
2004-04-13 『偽書作家列伝』種村季弘 学研M文庫
2004-04-03 『紋章』横光利一
2004-04-02 「使いみちのない光景」村上春樹 中公文庫
2004-04-01 「血と砂」イバーニェス 岩波文庫
2004-03-06 「蛇にピアス」金原ひとみ
2004-03-03 「魔群の通過」山田風太郎 文春文庫
2004-02-29 「飛雲城伝説・弧児記」半村良 講談社
2004-02-25 「春夏秋冬いやはや隊が行く」椎名誠 講談社
2004-02-22 「 矢作俊彦×高橋源一郎「文学界」12月号」
2004-02-21 「あやしい探検隊不思議島へ行く」椎名誠 光文社
2004-02-12 「内海の漁師」ル・グィン ハヤカワ文庫
2004-02-11 「サウンドトラック」古川日出男 集英社
2004-02-08 「ピース」みうらじゅん 世界文化社
2004-01-29 「日本の面影」ハーン 角川文庫
2004-01-20 「鳥」デュ・モーリア 創元推理文庫
2004-01-19 「日本語の外へ」片岡義男 角川文庫
2004-01-18 「レキオス」池上永一 文芸春秋
2004-01-09 「爬虫館事件」角川ホラー文庫

「創るモノは夜空にきらめく星の数ほど無限にある」宮脇修

「創るモノは夜空にきらめく星の数ほど無限にある」宮脇修 講談社

食玩で有名になった海洋堂の社長の伝記である。

もともとはプラモデル屋から出発したのだが、その部分の回想はすこぶる面白い。

情熱とか無鉄砲とか関西商人とか、いろんな言葉が連想されてくる。

けれどフィギュア界を創造していくあたりから面白くなくなっていくのは何故なんだろう。

世界的に有名になっていくのに反して、その記述に熱が感じられない。

ある意味まだ回想になっていないからなのだろうか。

どうもいわゆる「オタク」的なモノへの愛情みたいなものが感じられないのだ。

スロットレーシングカーが好きだった私のような世代にはその方がとても安心ではあるのだが。

「あなただけができることをやりなさい」細貝俊夫

「あなただけができることをやりなさい」細貝俊夫 翔泳社

偉大なプログラマー23人の名言集、というより伝記である。

かつてプログラマーとして仕事をしていたからといって創造者のことは何も知らないものだ。

半分ぐらいは名前を知ってはいたが、彼らのことは何も知らなかった。

記憶に残ったのはCOBOLを作ったグレース・ホッパーは英語文法を基礎にしたプログラム言語を開発したが、そうした発想は今でも異端であったり。

スーパーコンピュータで有名なクレイも計算速度にこだわった異端だった。

TeXを作ったクヌースがプログラムを美学として見ていたというエピソードの数々は面白ろすぎる読物だった。

まあ灯台基暮らしというやつか。

「列島縦断へんな駅!?」所澤秀樹

「列島縦断へんな駅!?」所澤秀樹 山海堂

いまひとつエピソードに弱く、駅の説明だけに終わっている駅本。

最近、面白い旅ものを読んでないなあ。

「文庫本・雑学ノート」岡崎武志

「文庫本・雑学ノート」岡崎武志 ダイヤモンド社

こういう絶版本の紹介は面白い。

ただ著者と趣味が違うのでいまひとつであったが。

ほんとに著者は文庫好きなのだからこの本も文庫で出せばよかったのに、と思う本だ。

水曜日。文化の日。

幼稚園のイベント準備の追い込みでかみさんは大忙し。

倒れるんじゃないかと思うほど。

私が社交的ならもっとかみさんも楽になるとは思うのだけれど。

「汁かけめし快食学」遠藤哲夫 ちくま文庫

「汁かけめし快食学」遠藤哲夫 ちくま文庫

強力な食欲本である。

なぜ汁かけめしはうまいのか。

これをえんえんと綴った本で、読んでいるうちにお腹が減ってくる実用本。

しかし食後には読む気にはなれないのが弱点であった。

久しぶりに楽しいエッセイを読みました。

著者のホームページも読みごたえ十分なのである。

土曜日。

午前中、内科に行く。

午後から本を読んだり、寝たりしていた。

「鴎外の坂」森まゆみ

「鴎外の坂」森まゆみ 新潮文庫

森鴎外の小説は難しい漢字が多くて苦手なのだが、鴎外という作家にはとても興味をそそられている。

この評伝はとても身近な視点と地理的な感覚が新しく、面白く読めた。

まあ内面への踏み込みがないのがこの本のいいところなのだけど、やはり鴎外には苦渋なる内面も必須かも。

水曜日。

風邪をおしての残業は辛い。

「鉄道の旅を楽しむ本」アジア大陸編 世界の車窓研究会編 青春文庫

「鉄道の旅を楽しむ本」アジア大陸編

やはりこういう旅ものは著者が匿名不特定だとつまらない。

テレビ番組はまだ絵があるからいいけど、単なる活字の紹介文だとさみしい。

シベリア第二鉄道の旅行記が入っているので買ったのだが、とてもじゃないけど旅行記とは呼べないよなあ。

バム鉄道だけでも面白い一冊の旅行記になると思うんだけど。

「昭和電車少年」実相寺昭雄 JTB

「昭和電車少年」実相寺昭雄

ウルトラセブンの監督が電車オタクだったとは知りませんでした。

特急とかよりも普通電車についての記述が多いところがとても彼っぽい。

「わたしは、そんな自動車専一の街がイヤで、ウルトラマンの地底怪獣テレスドンを、赤坂見附に出現させたが、所詮無駄な抵抗だった。

その折りには、都電がそんなに早く撤去されると思っていなかったので、好きな都電の風景を撮さなかった。残念でならない。」

こういう人が特撮を撮っていたのですね。

同様に、あの幻と呼ばれる満州鉄道の「あじあ号」に乗ったことがあるというエピソードもこの監督らしいものですね。

日曜日。

明け方、二度ほど小さい地震があって目がさめる。

今年は地震やら台風やら自然の脅威が多い。

預言者きどりでいろんなことを言っている人は嫌なものだが、それでも人災のような気がしてしまう。

たぶん水俣病などの公害が騒がれていた頃よりももっと大規模に自然改造は進んでいるんだろう。

「20世紀SF・1940年代」1・星ねずみ

「20世紀SF・1940年代」1・星ねずみ

木曜日。

ずいぶんと昔に買って読まなかった本だ。

アシモフとかクラークやらブラッドベリの短編が載っているが、やはりタイトルのフレデリック・ブラウンはいい。

最近、評価が高いスタージョンもなかなかだが、ラストのチャールズ・ハーネス「現実創造」は面白い。

SFというよりも奇抜なラテンアメリカ小説といった、ボルヘスあたりに近い雰囲気。

この人、ほとんど翻訳で出てない模様で、アメリカSFもなかなか奥が深い。

「夢の底から来た男」半村良 角川文庫

「夢の底から来た男」半村良

角川文庫版半村良短編集6巻目。

広告代理店に勤め、家庭を愛する平凡なサラリーマンを襲う悪夢の表題や民話的な想像力を日本列島改造華やかりし頃の工事現場を舞台にした「血霊」。

いま読むと古臭くて読むのが恥ずかしいところもあるが、なんとなく今ではスタジオジブリがアニメにするような話が多い。

今も昔もホラ吹き話には目がない、国民性なのか。

ジーン・ウルフ特集

SFマガジン2004年10月号「ジーン・ウルフ特集(監修・柳下毅一郎)」

「アメリカの七夜」が載っていて、柳下毅一郎の「特集解説」が面白い。

宮脇孝雄、柳下毅一郎、大森望の対談を読んでも、『ケルベロス第五の首』は謎だらけであった。

「しあわせの理由」グレッグ・イーガン

「しあわせの理由」グレッグ・イーガンを読み終わる。

表題作はとても哀しい話で、なんとなく「アルジャーノンに花束を」を思い出してしまう。

素直にいい短篇だなあと思う。

たまにはこういうひねくれてない本も読まないと、何のために小説なんか読んでいるのかわからなくなる。

まあメロドラマといってしまえばそれまでだけど。

知識より感動を、てな感じ。

「コックサッカーブルース」村上龍 小学館

「コックサッカーブルース」村上龍

まるでサドのような過剰な小説で、うんざりする。

それでも前世紀の小説と違うのは、バブル期の日本を葬ろうとする意志だろう。

その機動力をフウゾクの娘にジャンヌ・ダルク役を求めたりするあたりが村上龍ですね。

このジャンヌ・ダルク率いる秘密結社が不明なままで終わるのだが、これを克明に書いたのが後の「希望の国のエクソダス」なんだろうね。

今日は娘が幼稚園をズル休みしたので、一日遊んでました。

まあ私もズル休みのようなもんだから、似たもの同士の休日はじゃれたり絵本を読んだり、家の中でだらだらと過ごしました。

「むはの断面図」椎名誠 本の雑誌社

「むはの断面図」椎名誠

椎名誠のエッセイは無尽蔵なのだろうか。

まだ未読のものがあったりする。

この中では日記が面白い。

やはりプロは違いますな。

連休一日目である。

なんとなく早起きしたので、子供たちと森林公園に行く。

久しぶりに行くと新しいアスレチックがいろいろできていて、子供たちはお昼を食べるのも忘れて遊んでいる。

夢中になれることがあるのは正直羨ましい。

人生は川の流れのようなもの、と唄ったのはPFMと美空ひばりだが、それがどんなことなのか、今更にわかるような気がする。

人生を下っていくことは、自分自身が傍観者であることを感じている自分が、常に存在していることを強いられる。

それが中高年を自覚するということなのだろうか。

この哀しさは李白とか淵明の世界みたいなものか。

「しあわせの理由」グレッグ・イーガン 早川文庫

「しあわせの理由」グレッグ・イーガン

いまどきのSFはSFらしいと思わないのだけど、イーガンは堅気だ。

とにかく驚かしてくれるアイディアがうれしい。

久しぶりの仕事は嫌なことばかりだ。

それでも働かざるもの食うべからず、である。

「アジアの少年」小林紀晴 幻冬社文庫

「アジアの少年」小林紀晴

アジアの旅の写真集。たいして面白くなかった。

たぶんテーマが一貫してないからだろう。

なんだか疲れが出て、昼間はだらだらと過ごす。

夕方から幼稚園で演奏会があったので、子供たちと繰り出す。

丸太をくりぬいたオリジナルの打楽器の演奏で、けっこう面白かったが、子供たちには単純だったのか、いつものように友だちと遊んでいた。

「ボディ・アンド・ソウル」古川日出男 双葉社

「ボディ・アンド・ソウル」古川日出男

著者自身の日常から始まるのでエッセイなのかと思いきや、私小説であった。

なにが起こるわけでもなく、小説家としての日常がだらだらと書かれているだけだ。

なんとなく思い浮かべたのは太宰治。

毎日酒を飲んでクダ巻いてるとこなんて、よく似てる。

というよりまるで私の独身自身の頃のようで、酒浸りなのである。

趣味はまるで違うけど、その雰囲気に共振してしまった。

「食べていくための自由業・自営業ガイド」本多信一 岩波アクティブ

「食べていくための自由業・自営業ガイド」本多信一

いづれ会社を辞める身となって本屋をうろつくと、こういう本が目に入るようになる。

次は正社員になれない可能性も高いから自営というのも視野に入ってくる。

著者は職業相談をボランティアでやっている人。

失業者からお金は取れないから、というのがその理由で相談内容に関してはかなり親身そうである。いちど相談してみたくなるなあ。

そんな人が書いたガイド本だからけっこう現実的。

でも自営業のラインナップを読んでもこれをやりたい、というのがあまりない。

当たり前だけど自分がやりたいと思うことがないとなあ。

今日はサーバをたてたり、資料を作ったりで遅くなる。

遅いと子供の顔も見れないので寂しい。

「シンプル人生の経済設計」森永卓郎 中公新書

「シンプル人生の経済設計」森永卓郎を読む。

「年収三百万円時代」でも楽しく暮らせると言い出した人の本。

「シンプル人生」とは専業主婦と子供と住宅ローンという人生三大不良債権を処理することだと書いている。

まあ、そういう考えもあるだろうねえ。

しかしこの三つは大切なものだからみんな苦労して手に入れてるのにね。

評論家というのは気楽でいいね。

「奇術師」クリストファー・プリースト

「奇術師」クリストファー・プリーストを読んでいる。

「魔法」から12年ぶりの翻訳だという。

非常に英国的でリリカルな作家で私は大好きなのだけど、日本での人気はマイナー作家から抜け切らず、なかなか翻訳でないのが残念だ。

この「奇術師」もライバルである二人の奇術師を巡る物語が入れ子構造になっていて、パズルを解いていくような楽しみで読める。

奇術師たちの対立が「藪の中」のような、スリリングな展開になっていくあたりが伝統的な英国作家らしい、知的遊技に満ちている。

面白いよ。

今日も会社で根を入れた資料作りをしたり、暗い話をお客さんのところに行ってしてきたりと、またまたへたってしまった。

家に帰って風呂に入る気力もなく、ご飯を食べてすぐに寝る。

「ケルベロス第五の首」ジーン・ウルフ 柳下毅一郎訳 国書刊行会

「ケルベロス第五の首」ジーン・ウルフを読んでいる。

出だしはイメージが定着しないので、読むのが苦痛だった。

だんだんとイメージが蓄積されてくると微妙な世界が構成されてきて面白くなってくる。

確かに誰かが書いていたようにナボコフを読んでいるような感じもする。

不思議な作家だ。

今日は一日会社に居た、珍しい日だった。

異動になったのだが部所名が変わっただけで回りもやることも同じ。ではなく新しい仕事が増えたか。

サラリーマンは辛いね。

「キマイラの新しい城」殊能将之 講談社ノベルズ

「キマイラの新しい城」殊能将之を読了。

迷探偵石動戯作とその助手アントニオの探偵物語の最新作。

テーマは、天使は三段論法ができる、です。

なんだかよくわからないと思いますが、これは聖トマス・アクィナスの言葉であり、今回の殺人事件の解答はこの言葉にあるのでした。

これはネタバレですが、読んでみないと意味するところはわからないと思います。

さて、いつでもヒネリを畳み込まないと気がすまないこの推理作家の新作のひねくりは、殺人事件の依頼主が、被害者であるということです。

なにそれ?ですが、ようは死後の世界というやつで、750年前のフランスの騎士の亡霊自身が殺された自分の犯人を探して欲しい、というものなのです。

とは言っても歴史ミステリでもなく、現代日本のしかも東京の代表的観光地である六本木ヒルズがその舞台のひとつだったりします。

もうばかばかしくて読まずにいられない、のですね。さらに作者の新境地というか、まるで香港映画のような楽しい活劇シーンも挿入されていたりと、お薦めの一冊なのであります。

これは参考文献に掲げてあるマイケル・ムアコックの剣と魔法の物語へのオマージュであるせいかも知れません。

そうした中世騎士物語的なファンタジーや中世スコラ神学の魅惑的な雰囲気を織りまぜながら、新本格派的な推理をぬかるんだ現代日本を舞台に繰り広げられるのは、殊能将之しかいないでしょう。

そのあまりにばかげた推理には、亡霊もあきれて退散するほどの顛末が待っているなんて、よくできたお話なのです。これからも続くと思われるこの探偵物語、助手のアントニオが一体何者なのか、超自然的な存在との対決みたいな話になっていくのか、まだまだ楽しませてくれる余地がたっぷりありそうです。

2004-05-09 「夜明けを待ちながら」五木寛之 東京書籍

ひどく鬱な状況が続いているので、こんな本を読んでみた。
この人の処世術というのは読んでいて頷けるものもあるのだが、いまひとつ
馴染めないものもある。
それでも高校の頃によく読んだ作家なので、どこか懐かしい。

2004-05-08 「三角館の恐怖」江戸川乱歩 創元推理文庫

いま読むとおおげさな話である。
莫大な遺産をめぐる親族の殺人劇はもはやこの国の出来事ではないような幻想的
な心理劇が繰り広げられている。
推理小説としてよりも風俗的な興味から読むのが面白い。

2004-05-04 「流星ワゴン」重松清 講談社

連休は仕事の重みでいっぱいだった。
この本も重たく、主人公の父親が妻がテレクラに陥り、子供は引きこもりで、
更に自分はリストラにあい、自殺まで考えるに至る、といった身に浸みるもの
だった。
こうした不安はいまの時代、みんなが抱えていることなのだと思う。
ショッピングセンターに行くと楽しそうな家族の笑い顔を見ることができるが、
それはあくまでその人の一面に過ぎないのだということを改めて考えさせられる。
現実をよく見た重たい本である。

2004-04-29 「笑犬樓よりの眺望」筒井康隆 新潮社

廃刊となった「噂の真相」に連載していた、けっこう毒舌なエッセイで、読んでいて小気味好い。
今日は天気が良く、久しぶりに子供と川縁りを散歩する。
気が晴れるというのはこういうことをいうのだろうなあ、と思いたくなる気候である。
世の中は連休モードに入ったのか、景色がいくぶん静かに見える。
今年は事情により長野に帰れないのが寂しい。
休みが仕事で縛られるのも寂しい。
なんとなく何をしていても寂しい。
秋じゃねーぞ。

2004-04-28 「お父さんは時代小説が大好き」吉野朔実 角川文庫

今日も胃が痛い会議をこなし、日がな会社を辞めることを考えていたのであった。
今年に入ってから一日が長い。
嫌なことが多いからである。
明日が休みだと生きた心地がしてくる。
しかし連休の何日かは仕事なのであった。
はあ。
本を題材にしたこの漫画。
けっこう胃には好い。

2004-04-27 「学ぶとは何だろうか」鶴見俊輔座談 晶文社

「6、70十年前は戦争へ行って国土をひろげるのが国体だったんですが、いまは経済ですね。」
「金をもっていなきゃだめだ、金を稼ぐために努力するのはあたりまえじゃないか、これが新しい国体ですよ。いま日本を支配している国体ってそういうものなんですよ。」
いまどきの絶対的な価値観はお金以外にない。それより価値があるものはこの世にない。
その通りなのである。
この価値観から自律的に、客観的に物事を見るためには、宗教的な価値観しかないだろう。

2004-04-25 「青春の光と影」戦後短篇小説再発見 講談社文芸文庫

このださいタイトルが今日では、とても心地よい。
しかもそれぞれの短篇がとても刺激的なのである。
いまとなると時代の刻印が目立つ大江健三郎や金井美恵子より、思想性が希薄な石原慎太郎や丸山健二の方が面白い。

2004-04-18 「血と砂」イバーニェス 岩波文庫

闘牛という文化がスペインの世界帝国の没落とともに栄えたという、著者が登場人物に語らせる論旨はとても納得できる。
現実の血生臭い戦争から劇場で行われる戦争へと暴力を変化させることで人間性を保とうとしたのだと思う。
代理戦争と呼ばれるオリンピックやサッカーのようなものだ。
日本の戦後の繁栄もプロレスや野球、やくざ映画といったカタルシスがかなり大きな緩衝装置として働いていたのだろう。
そして消費尽くされたそれらはこの小説の主人公である闘牛士の最後のように哀れなものなのである。

2004-04-17 『ラテン音楽名曲名演名唱ベスト100』竹村淳 講談社

お休みである。
今日はかみさんが髪を切りに行くので、子供達を連れて農業講演に遊びに行く。
暑いぐらいに天気がよく、遊覧するには丁度よい気候であった。
いつもこんなおおらかな気持ちで生活できればいいんだけど。

2004-04-16 『神の子どもたちはみな踊る』村上春樹 新潮文庫

再読である。
仕事が忙しい最中に村上春樹を読むと体に利く時がある。
いつもとは違う体のさざめきがふるふると肌に伝わってくるのだ。
精神というものは体から独立したものだという日常意識があるのだけれど、こういう本を読むことで体の底の方で何かを感じている自分を知ることができる。
それはあくまで身体的な感情なのだ。

「かえるくん、東京を救う」に登場するサラリーマンのように、人知れず世の中の人々のために尽くすというのは、生活が精神を形成するみたいな感じで、他人を信じていこうという謙譲な気持ちにさせてくれる。

2004-04-15 『サウンドトラック』古川日出男 集英社

熱帯化した東京を舞台に、奇矯な兄妹の成長を描いた長編である。
骨子は村上龍の「コインロッカーベイビーズ」のようである。
前半はかなりひきこまれるテンポのよい筆致だが、後半はアイディアが拡散しすぎて収拾がつかなくなった感じだ。
おしいなあ。

2004-04-14 『地球の裏のマヨネーズ』椎名誠 文藝春秋

だんだんと説教くさくなってきた椎名誠のエッセイである。
しかし読んでいる私も共感できてしまうのだから、おじさんの感慨なのか、めっきり世の中は味気なくなってきているのかのどっちかだ。
未来というかいまの地球に明るさがないのは、歴史的に見ると危険な情况なのだろうな。
あるいは種としての日本人だけの固有なものなのか。
長い不況が続く経済は軟着陸できたのかもしれないが、閉塞感という壁はまるで万里の長城のようである。

2004-04-13 『偽書作家列伝』種村季弘 学研M文庫

久しぶりに種村さんを読む。
相変わらず面白い。
比べるまでもないのかも知れないが、昭和のマニアな物書きと平成のオタクな物書きは、洋食屋と吉野屋ぐらいの開きがある。
まあこういう比べ方自体、発想が貧困なのだが、視線の奥行きがかなり違うと思うんだよな。
子供の学力低下と無関係ではないとも思ったりする。
凡庸という言葉をして、蓮見重彦がワールドカップ決勝戦の後、日本の若者がスタジアムを掃除していたのを見て激怒したという噂は、どこか不安を掻き立てられるお話だと思う。

2004-04-03 『紋章』横光利一

久しぶりに横光を読む。
相変わらず優雅な文章である。
たまにはこういう本を読まないとメディアな時代にそのままトコロテンのようにぶにぶにになってしまうのだ、心が。
昭和という時代はあまりよい世界ではなかったけれど、マトモなものもたくさん存在したんだと思う。

2004-04-02 「使いみちのない光景」村上春樹 中公文庫

短い写真文集である。
今週も疲れました。こういう気分のときにはいい本です。
ときどき私達が考えているような言葉にならない疑問を文章にしているのが、さすが小説家なり、ですね。

2004-04-01 「血と砂」イバーニェス 岩波文庫

スペイン文学の古典である。
伊達な闘牛士を描いた傑作である。
何十年ぶりかの再読なので、ほとんどストーリーを忘れているが、熱い闘牛の雰囲気だけは覚えていた。

2004-03-06 「蛇にピアス」金原ひとみ

とにかく眠いし、体も疲れている。
なので朝起きたのも九時過ぎ。
こんなことはいままでないほどの朝型だったのに最近はだめだ。
一日だらだらして、話題の芥川受賞作などを読んだりする。
時代が変わっているのを感じるけれど、悪いほうに変わっているとしか思えない。

2004-03-03 「魔群の通過」山田風太郎 文春文庫

山田風太郎とは思えないほど実直で沈痛な物語である。
一応、茨城県に住んでいるので天狗党のことぐらいは知らないとなあと思って読んだのだけれど非常に重たい。
まるで司馬遼太郎の小説のように史実的なのであった。

2004-02-29 「飛雲城伝説・弧児記」半村良 講談社

なんだかのんびりした日曜日である。
それでも子供たちは喧嘩をしたりとうるさいので、特にやることもないから図書館へいく。
子供の本を借りるついでに久しぶりに半村良を借りてくる。
これは日本の架空の戦国時代を描いたような伝奇小説でなんとなくムー大陸シリーズと似てないこともない。
まあ物語の始まりとしては鷹揚な雰囲気だけど、読み進むうちにどんどんはまっていく。
やはり半村良は客商売というものをよくわかってますよね。
物語は不可思議で魑魅魍魎なものがなけりゃだめなんだよ。

2004-02-25 「春夏秋冬いやはや隊が行く」椎名誠 講談社

会社が嫌なのでいやはや隊を読む。
たまにはこういうキャンプとかすると気が晴れるものなのかも知れないとも思う。
けれど実行に移すほどの実行力がなく、それならば近場のスパでいいやとも思う。
私の場合、いやはやというよりまあいいっか、なのである。

そういうものだ、もいいですね。でもそこまで達観できてないかも。 / 羊男 ( 2004-03-08 11:55 )

2004-02-22 矢作俊彦×高橋源一郎「文学界」12月号

今日は図書館に行って、文学界なるものを借りてくる。
この二人がどんなことを話しているのか興味があったのだが、やはり源ちゃんは小説よりもこういった対談とかの方が面白い。
矢作さんがいまの女子高生の話し言葉の感覚を絶対共有したくない、とのたまったのには頷いてしまいました。
彼女たちを矢作さんは二十一世紀の人たちと言っている。
あきらかに私は二十世紀の人だよな。

2004-02-21 「あやしい探検隊不思議島へ行く」椎名誠 光文社

今日は天気がいいのだが、私もかみさんも一週間の疲れがたまっているので、家でだらだら。
仕方ない子供たちは自ら庭に出て遊んでいた。
夕方、子供たちを連れて本屋へ行って「文芸春秋」を買う。
芥川賞がふたつ載っているのでかみさんが読みたいというわけなのであった。
このおじさん雑誌をぱらぱらめくっているといつの間にか適齢対象に自分がなっていることが少しばかり寂しい。
寂しいので椎名誠の探検隊シリーズを読む。
日本やスリランカなどの島巡りを書いたものだが、やはり瀬戸内海やらオホーツクの無人島でキャンプを張る文章の方が圧倒的に面白い。

2004-02-12 「内海の漁師」ル・グィン ハヤカワ文庫

仕事は打ち合わせ続きで、本来の仕事ができず、ストレスが溜る。
読んでいるこの本も実はそれほど面白くないので、ストレスが溜る。
でもなぜかル・グィンを読みたいと思うときがあるので困る。
この短編集も文化人類学的な視点が目に付くというか鼻に付く。
こうした遊びについていけないのは余裕がない証拠だと思う。
まあル・グィンはアイディアはいいけど、物語がいまいちだと思うのだけれど。

2004-02-11 「サウンドトラック」古川日出男 集英社

休日である。確か建国記念日ではなかったか。
どうでもよいことだが、週の中日に休みがあると楽だ。
娘が風邪ぎみで咳が出るので外出はせず、家の中で過ごす。
だが子供たちが退屈すぎてうるさいので、レンタルビデオに行ってお子様向けのを3本
借りてくる。1本150円。
あとは古川日出男を読んで過ごす。
まるで若い頃の村上龍みたいなストーリーと文体である。
テンポがよくすいすい読める。
テーマも近未来の温暖化現象が進んだ日本という設定でますます読ませる。
別な作品を読んでみたくなる作家である。

2004-02-08 「ピース」みうらじゅん 世界文化社

午前中はおばあちゃんを連れて買い物へ。
午後はかみさんの車の練習と図書館へ。
なんとなく目に付いたみうらじゅんを借りてくる。
テレビのタモリ倶楽部とかでは見ていた人だがはじめて読むと同世代人で親近感が湧く
。まあ仏像には興味わかないけど、親孝行ブームを作ろうというのには参りました。

2004-01-29 「日本の面影」ハーン 角川文庫

明治期の日本というのは私にとっては異国のようなものだ。
ハーンにしても漱石にしても、彼らが描く日本はいまと繋がっているのだけれど、その
感触がまるで違う。
それは文化の変容といったものも大きいけれど、自然の変化も大きいのではないか。
温暖化現象がそうさせたのか、例えば四季の変化といったものはハーンがこの本で描い
ているような細やかさが、今の日本では見当たらないのだ。
それはきっと科学的に空気の成分が今とは違うとか、きっと証明できるようなはっきり
としたものなのだろうと思う。

2004-01-20 「鳥」デュ・モーリア 創元推理文庫

今日も仕事で夜遅い。
デュ・モーリアも初めて読む。
最近初めての作家ばかり読んでいる。
これはヒッチコックで有名な、鳥が人間を襲う映画の原作だ。
非常に幻覚的な筆致で、凄く面白い。
これはお薦めな本である。

2004-01-19 「日本語の外へ」片岡義男 角川文庫

今日も仕事だ、はあ。
片岡義男は有名だけど生まれて初めて読む。
これは日本語や戦争について書かれたエッセイだ。
よく掲示板を読みに行くヤスーさんが持ち上げていた本で、気になっていたので本屋に文庫で並んでいたのを見て買ったのだ。
非常に具体的な言語論で刺激的である。
片岡義男ってこんなことを書いていたんですね。
小説もちょっと読んでみたくなりました。
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片岡義男を読み終わる。
とにかく重厚な日本と日本語に関する本でいろいろその多角的な視点からのもの言いに
感心することばかりだった。
最近こんなこと考えたことなかったものなあ。
この作家は単にアメリカ育ちの人だと思ってたけど、小さい頃に見た広島の原爆雲につ
いての回想録は胸にジンとくるものがありました。

2004-01-18 「レキオス」池上永一 文芸春秋

今日はかみさんが友達の家に行くので車で柏へ。
子供とかみさんを降ろしたあと、ダイエーに行ったり、喫茶店で本を読んだりして待つ。
池上永一という作家は初めて読むが、沖縄の情景がきめ細かい情景が楽しい。
沖縄生まれの作家というのも読むのは初めてかもしれない。
「レキオス」は沖縄を舞台にした「アキラ」みたいな物語だ。
SFみたいだけど、米軍と切り離せない沖縄の光景が非常にリアルに描かれている。

2004-01-09 「爬虫館事件」角川ホラー文庫

今朝は食欲がなく、朝抜き朝。
午前中は余裕がなく、昼もパンを食べたか食べないかよくわからぬまま客先へ。
それでも打ち合せはスムーズに終わり、早くに家に帰る。
娘と風呂に入るが、いきなり泣き出すのでびびる。
なんだかよくわからぬが、どうも眠かったらしい。
はあ。
角川のは新青年の傑作撰で、横溝正史や江戸川乱歩、夢野久作などの短篇が入っている。
まあまあ面白い選集だった。


先頭  表紙