◆1996年度こんなの読んだよランキング◆47冊◆

★★★★本の解説

1.『三四郎』夏目漱石
(いま松田優作主演映画「それから」を見ながら書いてます。笑) ブックス・カフェ「名作を読む」で自分が選ばせてもらった作品。
中身もよかったけど、ひとつの作品でいろんな人の感想が聞けて、 とても楽しかった思い出のために(笑)。

2.『マシアス・ギリの失脚』池澤夏樹
去年も何冊か夏樹さんの本は読みましたが、これがトップ。 幻想でなく限りなく現代的な南洋物語。 
いつか南の島に行きたいと思っている貴方に。

3.『私小説 from left to right 』水村美苗
作品全体がぴんと張り詰めている帰国子女の物語。 
抽象さと具象のバランスが辛うじて保たれているところがすごくいい。日本という場所がよくわからなくなったときにどうぞ。

4.『レキシントンの幽霊』村上春樹
久方ぶりの春樹の短編小説集。 ここの処アメリカに住んでいたせいなのか、いままで以上に物語が 現代アメリカ作家が書くようなミニマルでウィットに富んでいるも のが多い。
おしゃれな気分になりたいときにいかが?(笑)



★★★本の解説

5.「緊急特集ジル・ドゥルーズ」現代思想1月号
いや〜。去年はこの人がいなくなってしまって、ますます思想からは離れていった1年でした。
この現代フランスを代表する哲学者ジル・ドゥルーズが、もう70歳を越してから自殺だって・・・。
私にとっては「世界の知性」のような人でした。私が20歳のときに現代思想ブームが起きて、 ドゥルーズ=ガタリの『アンチ・オイディプス』が訳された。 私たちは先を争うようにしてこの本を読んだんだよね。
「リゾーム」「器官なき身体」「脱属領化」「戦争機械」「千の高原」・・・。
生まれてはじめて聴いたロックのようにそれは、とってもかっこよかったよ。 新しい概念がいま、この目の前にあるというのはとても、凄いエネルギーだった。
哲学に夢中になるなんて、不思議なことだった。

この本にはガラス細工のように痛々しくも美しい、デリダの追悼文が載っているので上位にきました。
この文章はいまだに後をひいています。

6.『復興期の精神』花田清輝
とても明るいのが良かったです。戦後思想のとっても良質なものを読んだという感じ。

7.『ヒュウガ・ウイルス』村上龍
これはとにかく、かっこよかったですね。私はこの路線の龍ちゃんが一番好きですね。

8.『解体屋外伝』いとうせいこう
この小説には脱臼させられましたね。こんな生意気な物語はなかなかこの先出てこんでしょう(笑)。

9.『純粋な自然の贈与』中沢新一
なんか久しぶりに硬派な中沢先生の本を読みました。
「贈与」という哲学テーマに自然科学のモチーフを導入するあたりが「くさい」と言われる所以なのですが、 ミーハーにとってはそこがくすぐりどこなんですね。(笑)

10.『シュマリ』手塚治虫
はじめて読んだんですが、すごい作品です。開拓直後の北海道を舞台にした復讐劇なんですが、 いわゆる「植民地」としての北海道を描いていて刺激的というか、とっても考えさせられます。
これを読んだのは山口昌男さんが、この当時の光景を描いた数少ない作品という紹介があったからでした。 いま、同様の時代を描いている武田泰淳「森と湖のまつり」を読んでいます。

11.『むずかしい愛』イタロ・カルヴィーノ 訳:和田忠彦
これはとても気持ちいい短編小説集です。疲れたときに読むと、とってもよく利きますです。(笑)

12.『野ウサギの走り』中沢新一
3回目ぐらいになるのかな?何回読んでもこの本が一番好きですね。

13.『狂気の左サイドバック』一志治夫
都並敏史。知る人ぞ知る、元・サッカー日本代表。
もし彼がアメリカ・ワールドカップ予選に出ていたら・・・ と「あの」ドーハの悲劇はなかったかも・・ と思って見ていた人もいたと思う。彼がサッカーを始めてから日本代表としてワールドカップ予選に 出るまでを描いたノンフィクション。
これはサッカーを知らなく人にもおすすめです。
しかーし!この著者が書いたカズの伝記はツマンナイので、読まないほうがいいです(笑)。



★★本の解説

14.『偉大なるデスリフ』ブライアン 訳:村上春樹
これはけっこうジンときたのですが、ジンジンぢゃないところでこの点数。

15.『三万年の死の教え』中沢新一
とても小さないい本です。そのぶん感動も小さかったかな。

16.『フィンドホーンの花』アイリーン・キャディ 訳:山川紘矢・亜希子
まあ無難なところに、というべきか?(^^;)ウソウソ 感想も書いたし良心的な精神世界本だと思います。

17.『中島敦・全集3』
Booksカフェ「名作は読む」で利用しました。全3巻読破。あとは2巻のみとなりました。

18.『道草』夏目漱石
渋くて暗くていい小説。

19.『ピアニシモ』辻仁成
この人のデビュー作。友人が好きだというので読んでみました。ちょっと私の肌には合わないかな?
ついでに「エコーズ」も聴きましたが、素直すぎるんでないかい?という印象。

20.「日本・現代・美術」椹木野衣 美術手帳7月号〜連載中
私と同年代の美術評論家のタイトル通りの内容。一冊この人の本は読みましたが、そのときはつまんない、 という感想だったのですが、これはとても共感が持てるし、現代美術というわかりにくい領域を美術理論の中 だけで納めず、広いパースペクティブで解読しようとしている処が新しくて(ほんとはそれが当たり前なんだけ ど、笑)毎月楽しみに読んでいます。
難点といえば、私の世代に多い現代思想好きな処で、すぐそっちに脱線するところか(^^;)

21.『貧しき人々』ドストエフスキー 訳:木村浩
たまにはこういう古典もいいよね。

22.『民俗学への招待』宮田登
ふうむ(笑)

23.『エゴからエヴァへ』船井幸雄
案外健闘しました会長さん。そういえば、「人間の研究」も1巻目でとまってるな〜

24.『ことばと文化』鈴木孝夫
いま思うとこれを「名作で読む」で取り上げていたなんて、けっこう#1も前衛的ですね。(うそうそ、笑)

25.『ウェルズ・SF傑作集・1』訳:阿部知二
いま読むととってもよい。私の場合、ヴェルヌよりもウェルズが合ってるみたい。

26.『星の王子さま』サン・テグジュペリ 訳:内藤濯
あら〜あら〜あら〜(言葉がでない、笑)

27.『挑戦/プッサンを読む』フィリップ・ソレルス 訳:岩崎力
若かりしころのソレルス。けっこういい。・・・といっても知ってる人はいないかも・・・

28.『南鳥島特別航路』池澤夏樹
ラストが夏樹ですから、昨年はけっこういい本をたくさん読んだのだと思います。



★本の解説

29.『インパラは転ばない』池澤夏樹
30.『母なる自然のおっぱい』池澤夏樹

どちらもけっこう自然というか理科的な話題が中心のエッセイ。とても読みやすいかわりに印象が薄かった(笑)。

31.『村上朝日堂』村上春樹+安西水丸
32.『マイ・ロスト・シティー』フィッツジェラルド 訳:村上春樹

王国本といえども肌にあわないのがあって(笑)、エッセイはいまいちノレナイものがあります。
「村上朝日堂の逆襲」の方は好きなんだけど。フィッツの方は読んでいるときに心の余裕がなかったので、いまいち。
あくまで自分の問題です。(笑)

33.『石の夢・上』ティム・パワーズ 訳:浅井修
上巻を読んでそのまま忘れてました。(笑)

34.『ヴィーナス・シティ』マサキ悟郎
35.『謀殺のチェス・ゲーム』山田正紀

懐かしい日本SF。エンターテーメントとして楽しめました。

36.『海底2万リュー』ジュール・ベルヌ 訳:江口清
懐かしい世界SF。(笑)いま読んでもけっこう楽しめました。

37.『ラブストーリー、アメリカン』ローズ&テクシエ編 訳:柳瀬尚紀
38.『ヘミングウェイ全短編集・2』訳:高見浩
39.『白鯨』メルヴィル 訳:阿部知二

古いものから新しいものへ。共通点は「アメリカ」という国のことですが、けっこうそれぞれその時代のアメリカを 映している作品。

40.『システィーナのミケランジェロ』青木昭
初心者向けの本ですよん。

41.『消尽したもの』ジル・ドゥルーズ+サミュエル・ベケット 訳:宇野邦一+高橋康也
42.『法人資本主義の構造』奥村宏
43.『赤い楯』広瀬隆

これまた括ると「資本主義」について書かれた本です。匿名性と固有名。
それぞれの顔での資本主義を考えている本。

44.『シーシュポスの神話』カミュ 訳:清水徹
なぜかカミュ(笑)。こういう孤独感もたまにはいいかな。

45.『疑うということ』ルチャーノ・デ・クレシェンツォ 訳:谷口勇、他
46.『ケロッグ博士』T.K.ボイル 訳:柳瀬尚紀

共通点はつまらん、覚えてない、というところ。(笑)



W本の解説

47.『湘南少女歌劇団』山口椿
ジャンルとしては、猥褻本ともやおい本とも読める本。
登場人物は「笙」という名の華麗でクレヴァー、しかも獣のような瞳をもつ青年実業家と彼に 囲われている美しい少女たち。そしてこれまた不可解な魅力を持つ美貌の少女、伽耶。 彼と彼女たちが腐敗した東京を相手に繰り広げる世紀末的でゴージャスなエロスの乱舞・・・ ということで、ポルノ小説です。(笑)
昔まだ競馬をしていた頃、スポーツ新聞に連載されていたのをぼつぼつ読んでいたのですが、 今回文庫になってまとめて読んでみるとけっこう思想性が高いエロでした。
特にラストではデリダやドゥルーズの名前まで出てくる始末。(^^;) しかもよくあるエロスを形而上学にしたてあげてしまう方法ではなく(バタイユとか) 現代日本の荒廃している光景を抽出しながら、不安や狂気を性のカオスのだだなかに文化? 批評的な意志を溶け込ませている処が凡百のポルノと一線を画していると思う。
著者はあとがきでこの本を「サリンな時代の小説」と名づけているのが的を得ているポルノです。


1997.1.14

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