『スティル・ライフ』池澤夏樹

中公文庫


【紹介】
ある日、ぼくの前に佐々井が現れてから、ぼくの世界を見る視線は変って行った。
ぼくは彼が語る宇宙や微粒子の話に熱中する。
科学と文学の新しい調和。清澄で緊張にみちた抒情性。

【感想】

池澤夏樹のデビュー小説です。表題の「スティル・ライフ」と「ヤー・チャイカ」の中編二作が入っています。
舞台は日本。表題のものは、ドラマじたてのような、変種のアウトローものなんですが、 暴力はでてきません。
ちょっと世の中からはみ出してしまった人たちの話 で、ストーリーよりもその表現の方法がとても独特です。
作者自身もいってますけど、視点が理科の思考方法(というより技術に近い) を取っています。
それがこの作品ではうまく生かされていて、世界を優しく見つめているという感じがします。

うまく表現できないんですけど、宇宙と自分が実は深くつながりあっている、 ということを無理なく、しかも表面的ではない、地が足についた感動をもたら してくれます。
読まれた方にはわかると思うんですが、私も一度、成層圏に近い山々を 見てみたいなあ、と思いにさせられる本です。


★羊男★1995.9.28★

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