『ロスト・ソウルズ』ポピー・Z・ブライト
訳者:柿沼瑛子 発行:角川ホラー文庫

【紹介】

母親の肉体を引き裂いて生まれてきた、ヴァンパイヤの血をひく美しい少年。
つきまとう孤独を埋めるために、彼は魂を揺さぶるパンク・バンド『ロスト・ ソウルズ?』のメンバーが住むミッシング・マイルを目指す。
そして、さすらいのうちに出会った、緑の瞳の酷薄な青年ジラーに血と官能を教えられ、 心奪われてしまう。(背表紙より)

【感想】

「精神と肉体の境界を越えた濃密な愛を描く耽美ホラー」と裏表紙にコピーが ありますが、これはホラーではないですねぇ。吸血鬼の甘くせつない青春を描く 恋愛小説とでも呼びましょうか。
俗にいう「やおい趣味」という性倒錯美学もので、 とにかく美少年と端麗な青年しか出てこない(笑)、耽美ものですね。

この作品の登場人物では、368歳の哀愁ただよう清心な美中年吸血鬼の バーテンダーが良かったですね。吸血鬼のバーテンダーというのは、けっこう はまった役でした。クリスチャンという名前なんですけど(笑)。

内容はともかく、いわゆるポジティブ・パンクと呼ばれていたゴシック派の ロック・ミュージックが作中によく流れていて、好きな人にはたまらないかも しれません。バウハウスとかコクトー・トゥインズとか。
けっこう文章もしっかりしているので、こども騙しということはありませんから、 このあたりが趣味なひとにはいいでしょう。


★羊男★1995.11.5★

物語千夜一夜【第七十三夜】

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