『チップス先生さようなら』ジェイムス・ヒルトン

菊池重三郎訳 新潮 文庫


【紹介】
霧深い夕暮れ、暖炉の前に坐ったチップス先生の胸に去来するのはブルックフィールド中学での六十余年にわたる楽しい思い出……。

【感想】

ヒルトンという作家は初めて読みました。
自分の読書傾向には苦手なジャンルとか意識にも昇らない(笑)領域って誰にでもあると思うのですが、私の場合、学園ものとかがそうなんですね。

この本はやはり主人公のチップス先生の生き方と自分のそれとを比較して物事に対するスタンスを引き寄せて読むことになるから名作なんだと思いました。
このチップス先生というのはとても魅力的で歳取ったらこんなじいさんになりたいという感じをあちこちで受けました。
「老人力」じゃないけど、老生を肯定的に書いてあるものはこれからの自分にとって必用不可欠なものだから、とても説得力がありますね。
まあそれだけ老後(この言葉も後ろ向きで良くないよね)というものが身近に感じる歳になった自分がでてきたわけなんだけど。

やはりうちらのようなロック世代がじいさんになるのは興味があるところで、これからルー・リードやデビッド・ボウイがどんなじじいになっ ていくのかを参考にしようなんてところがありますね。まあ、日本人だと細野晴臣とかかな。

話がずれまくりましたが、読後そうした「ずれ」をもたらすのがこの本のいいところなんだと思います。

「失われた地平線」もいづれ読んでみたい。

★羊男★1998.10.18★

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